「日本伝統音楽ワークショッ プ」 
  〜ISME(国際音楽協会)第24回エドモントン大会〜

 ISME(国際音楽協会)の第24回エドモントン大会で、行って帰国しました。ISMEの「学校音楽・教員養成音楽コミッション」から依頼 されたものです。日本伝統音楽を総合的な学習の視点でという依頼です。ワークショ ップでは、体験を通して何かを学び取ります。世界中から集まった音楽教育家に、日 本伝統音楽の実技体験を通して、日本の生活習慣や、音楽観、哲学までも紹介したい と考えました。演目を選ぶのは大変です。わらべうた4曲と踊りのついた民俗舞踊2 曲を選びました。
わらべうたには、その民族の音楽文化のエッセンスが凝縮されています。歌や踊りに は、その民族の音楽伝統が集約されています。民謡の声の出し方や、踊りの重心の低 さは、ヨーロッパのものとは大きく異なっています。
   おてだまを通して、遊び に込めた祖母や母のやさしさや身体の技能を修練する知恵を紹介しました。途中で浴 衣に着替えることとし、浴衣の畳み方から簡素を尊ぶ生活習慣や、無や間を美として とらえる音楽観を伝えました。楽器にも音楽伝統が反映されています。太鼓や篠笛な ど日本の楽器の紹介をしました。篠笛は、インデイアナ大学のゲッツ教授が素晴らし く演奏してくださいました。
残念なことに日本では、若者の中に、自国の文化のアイデンテイテイがありません。 他の国の参加者に混じって、目を白黒させてながら、日本の若者たちが、日本文化の 「初体験」を楽しんでいたのが印象的でした。
  ISMEは、ユネスコの下部機関で、1953年に創立されました。現在70国から13 00人会員を有する国際学会で、世界の音楽教育に大きな影響を与えています。2年 に1度世界大会を開催します。1963年には第5回東京大会が開催され、東西の音 楽の融合を目指した基調報告が行われました。ISMEでは、この他にセミナーや出版を 行うとともに、「文化・マスメデイア・コミッション」など7つの委員会に分かれて 研究活動を行い、世界の音楽教育をリードしています。大会には日本から、毎回10 0人近い参加者があります。7月17日から22日まで行われたカナダのエドモント ン大会には、45カ国から約1000の参加がありました。
  今日、人々は安全とよりましな暮らしを求めて流動し、国々は多民族化し、各地で深 刻な民族紛争が起こっています。音楽教育を通して、異なった民族間の相互理解をど のように深めていくのか。音楽教育の果たす役割が深く問われています。ISMEにおけ る最近の動向は、西洋音楽一辺倒からの脱却、多文化音楽教育への取り組みでしょう 。1998年には、初めてアフリカ大陸、南アフリカで大会が開催されました。研究 発表やワークショップでも、アフリカ音楽、アジアの音楽などへの取り組みが、一段 と増えています。今年の演奏団体の1つであるカナダの「ニューファウンドランド・ シンフォニー合唱団」やフィンランドの「オウライネン・ユース合唱団」でも、西洋 発声による伝統的な西洋合唱に加えて、胸声発声による自国の先住民の伝統的な歌な どを生き生きと歌い、新鮮な感動を呼びました。日本でも、21世紀に向けて自国の 伝統に根ざした音楽教育、世界に広がる多文化音楽教育が、強く求められていること を思って、帰国したのです。(河北新報 2000.8.29)