心の底から願うまで待ちましょう


 ピアニストで、今は、時々親子コンサートや学校鑑賞会を開いている。若い頃から「ポストの数ほど生のコンサートを!」とコンサートを行ってきた。日本では、お稽古は盛んでも、身近に生のクラシック音楽に触れるチャンスはとても少ない。東京では、随分昔からホームコンサートや喫茶店など身近な場所でコンサートが開かれていた。音楽は、身近で生で触れるのが一番。クラシックは苦手という方でも、身近で演奏を聴けば、やっぱりいいなあと思われる。音楽家は、もっと身近な何気ないコンサートをたくさん開いて欲しいと心から願う。

 ピアノのお稽古について聞かれる。先だっては、ピアノのお稽古を始めるので、グランド・ピアノを買うと言われて、びっくりした。この先どうなるのかも分からないのにグランド・ピアノを買うのはとてももったいない。一方、ピアノは買えないから、電子ピアノでいいでしょうか?とも聞かれる。キーボードがあればいいと、私は自分の経験から思う。私は、ずっとおもちゃのピアノを弾いていた。アップライト・ピアノが疎開先から戻ったのは、4年生の終わり。グランド・ピアノは、1回目のリサイタルを終えてから、月賦で買った。私は、本当にピアノが好きだった。本格的にピアノを始めるにはあまりに遅い年齢。指も小さくて、ピアニストにはなれないと言われた。私の子ども時代もピアノや音感教育は三歳からと言われていた。私のピアノは、遅すぎだった。でも、気づけば、北海道を除く各地で、日本で一番たくさん「カルメン」を歌った成田絵智子さんの伴奏ピアニストとして十数年演奏し、ピアノ・コンチェルトやリサイタルなど行ったピアニストになったのだった。

 問題は、子どもが願ってもいないのに、楽器を買ってお稽古に通わせることだと私は思う。願ってもいないのに良かれと、子どもに様々なお稽古に通わせて、自由な遊ぶ時間を奪うのは本当に勿体ない。大学で長い間ピアノを教えた。学生の大半が、何らかの形でピアノのお稽古に通った経験があった。それは、ほとんどの場合、何の役にもたっていなかった。好きということにもつながっていなかった。「好きこそものの上手なれ」の言葉通り。本当に好きになるのを待つ。親は、子どもが本当に好きになるために一緒にやる。私の母は、ピアノや習字も皆、自分からやっていたから、ついおもしろそうだと私も夢中になったのだった。