素晴らしく美しい5月に


 ロマン派の作曲家、シューマンの歌曲集『詩人の恋』の第1曲目に「素晴らしく美しい5月に」という作品がある。「あらゆるつぼみが開き、あらゆる鳥も歌い出す五月に、僕の心にも愛が花咲き、彼女に打ち明けた」という美しい愛の歌である。昨今は、ユーチューブという便利なものがあって、フィッシャー・フィスカウなど何人もの歌い手の歌を直ぐに聴くことができる。是非、「素晴らしく美しい5月に」というタイトルで検索して、お聴きになってみて頂きたい。きっとヨーロッパの香りを感じることができるでしょう。貧しかったシューベルトも、友人宅に寄宿したりしながら、たくさんの歌曲を作曲した。ヨーロッパの歌曲は、日本で言う「歌曲」という固いイメージとは違って、友と親しく歌う歌なのだ。
 
 今年は、福島は、桜が散るとすぐさま、山々の新芽が燃え始めた。いつもは、ゆっくり鶯色から徐々に色づく新芽は、あっという間に、新緑へと変わった。私は、いわゆる若葉色の新緑より、鶯色の萌え始めの新芽から新緑に移る間が本当に好きで、毎日わくわくと心弾ませて、山を見る。

 作曲家の自伝などによく山を散策することが出てくるが、ヨーロッパに初めて留学した時に知ったことは、ヨーロッパの人々は、何かにつけて森を散策するということだった。それは、まるで絶対必要な生活の一部というように感じられた。疲れた時、体調の悪い時、横になって休むより、森を散策すると元気になるというのだ。日本でも森林浴とか、ストレスを解消するとか言うが、習慣としてヨーロッパの人々は、森と近しく、健康を森と主に維持しているように見えた。

 私の癒しの森は、伊達郡桑折町にある半田山自然公園だ。森というよりは、小さいのに深山の沼のようなたたずまいの半田沼が中心の自然公園。その昔、同僚の先生が、自然公園の銀山遊歩道に咲く、ヒメサユリの群落のことを教えてくださった。毎年、雪が終わる5月始め頃、沢山の山野草を見に、うきうきと車を走らせた。特にシラネアイやヒメサユリが好きで、まるで恋人に逢いに行くような気持ちで出かけたものだった。銀山遊歩道に入ると静かで、まるで深山の様に感じられ、その匂いに満たされる。昨今、ヒメサユリは、周りの草々に負けてしまって、めっきり数が減ってしまった。