日本音楽教育学会第41回埼玉大学大会口頭発表
ハンガリーのピアノ教育
―絵画・建築・数学などを総合し、即興を重視するハンガリーのピアノ教科書―
アパジ・マーリア著『ピアノの夢―創造的なピアノ学習』全3巻の意義

降矢美彌子・岩淵摂子(当日発表)
 
                        

2010年9月25日-26日、埼玉大学において日本音楽教育学会第41回大会が行われ、26日Q-6で、『ハンガリーのピアノ教育―絵画・建築・数学などを総合し、即興を重視するハンガリーのピアノ教科書(アパジ・マーリア著『ピアノの夢―創造的なピアノ学習』全3巻)の意義―』と題して、研究発表を行いました。以下口頭発表を載せます。

 ハンガリーのピアノ教育は、一般教育と密接に関連をもちながら、ソルフェージュや後には室内楽などと並行して7歳から行われます。日本では、それぞれ意義ある2種のハンガリーのピアノの教科書、『zongora iskola(ピアノの学校)』と、テーケ・マリアンヌによる『新ピアノの学校』(日本語訳名)が翻訳出版されています。本発表で詳しく触れることはできませんが、『zongora iskola(ピアノの学校)』と、テーケ・マリアンヌによる『新ピアノの学校』(注1) の表紙を載せます。


 『zongora iskola(ピアノの学校)』


出版年 1巻:1966年   2巻:1967年
編著者 ファントーネー・カッシャイ・マーリア
(Fantóné kassai Mária)ほか4名


『ピアノの学校』 (日本語版)


出版年 1巻:1969年  2巻:1970年
編訳者   加勢るり子




『新ピアノの学校』

『Találkozások
  a zongoránál
(ピアノとの出逢い)』
『Zenetarisznya
(音楽の知恵袋)』

『Egy-mással
(連弾の喜び)』
『Barátom:
a zongora
(ピアノは友だち)』
『Találkozások a
zongoránál Tanári
kézikönyv
(ピアノとの出逢い
教師用手引き書)』
出版年 1993年
著者   テーケ・マリアンヌ(Teőke Marianne)



『新ピアノの学校』(日本語版)


出版年 1巻:1996年  2巻:1997年  別巻:1996年
訳者 降矢美彌子




 さて、本発表は、2008年に出版された、最も新しい、画期的なハンガリーのピアノ教科書、アパジ・マーリア(Apagyi Mária)著『ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás (ピアノの夢―創造的なピアノ学習)』全3巻に絞って行います。


『ピアノの夢―創造的なピアノ学習
   (ZONGRÁLOM Kreatív Zongoratanulás)』



1巻           2巻           3巻
出版年 2008年
著者  アパジ・マーリア(Apagyi Mária)



 このピアノ教科書の画期的な点は、絵画・建築・文学・数学などを総合して、ピアノに限らず自然や人間のすべての事象に共通する側面を理解することからピアノ教育を始めること、そして、即興を重視すること、の2点です。
 今回は、特に理念や哲学の部分に絞って発表しました。具体的には、始めから40ページまでを扱いました。日本語訳については、金沢在住のハンガリー人、ラヂッチ・エヴァ(Radics Éva)さんにご協力をいただきました。この教科書の中には、子どもと一緒に見たり読んだりするページと、教師用の説明のページがあり、発表では、子どもと見たり読んだりするページを中心に扱います。
 
 まず、前提となるハンガリーのピアノ教育のシステムは、日本と大変に異なります。ハンガリーのピアノ教育は、国立の「zeneiskola」と呼ばれる「音楽の学校」で行われます。音楽学校という用語は、日本ではいわゆる音楽家養成の専門学校を意味しますが、ハンガリーのzeneiskolaは、器楽や声楽、民俗音楽、ジャズなどを全国統一の国家カリキュラムをもとに、小学校1年生から成人まで、生涯学習としても学ぶことができます。現在はプライベートなレッスンも行われるようになりましたが、ハンガリーではこの音楽学校でピアノを学ぶ生徒が大多数を占めています。すべての専攻において、教師は、国で定められた資格を持っています。ピアノ専攻では、ソルフェージュが必修となっています。

 この教科書の著者であるアパジ・マーリアは、1964年に、ペーチ(Pécs)市のLiszt Ferenc Zeneművészeti Főiskola Zenetanárképző Intézet(リスト・フェレンツ音楽院音楽教員養成科)を、ピアノとソルフェージュ教師の資格を得て卒業しました。1985-2008年にはペーチ市のMartyn Ferenc Művészeti Szabadiskola(マルティン・フェレンツ芸術自由学校)の音楽部門主任を務め、1998年には、zeneiskolaの即興のカリキュラムを執筆しています。

 『ピアノの夢』は、従来の初心者のためのピアノの教科書とは、全く異なった理念で構成されています。

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 この図は、1巻から3巻全ての表紙と、子どもが目にする最初のページに置かれているもので、真上から見たチューリップの図です。図の左上にハンガリーの国民的詩人ヴェレシュ・シャーンドル(Weöres Sándor;1913-1989)の詩が添えられ、下には「チューリップの花の上から見たいろいろなシンメトリー」と書かれています。詩の意味は、「世界は夢のように広い、でも、たった一輪の花にも、世界はある」です。図の左上には、Természet-Látás-Alkotás(自然―洞察―創造)という、この図のタイトルが書かれています。Látásはここでは、心の目で見ることであるとアパジは説明しています。この図の作者であるラントシュ・フェレンツ(Lantos Ferenc;1929-)は、画家でマルティン・フェレンツ芸術自由学校の視覚・造形芸術部門の主任を務めました。
 同じページの下に説明として、「自然は大きな原理によってできている。自然は一本の木、一本の灌木、一輪の花、1人の人間それぞれ異なる原理でできているのではない。全ては共通した、大きな基本原理でできており、だから結局は全て同じことで、私たちが何を研究しているか、もし私たちがそれについて十分に知っていれば、人生の基本原理を、構造を理解した。」という、ハンガリーの生化学者、セント=ジェルジュイ・アルベルト(Szent-Györgyi Albert;1893-1986)の言葉が書かれています。アパジは、音楽にもまた、その理念の根底に科学の原理があることを示しています。
アパジは、小さなものにも大きなものにも、あらゆるものには共通する原理があることをまず理解して欲しい、という願いを、この図と詩で、象徴的に表したと語っています。

 次に、チューリップの図と詩に象徴されるアパジのピアノ教育の理念を、一巻のはじめにあるこの教科書の序文から抜粋してご紹介します。

・ 「このピアノ教科書は、さまざまな分野に関連を持って作られて」いること
・ 「その出発点が、狭められた専門性によるのではなく、異なる分野が交わるところ、あるいはそれらの共通点や互いに影響し合うところにおかれるべき」
・ 「楽器の学習を通して数え切れないことを学ぶことによって、総合的な考え方が広がり、人格全体が豊か になり、将来どんな分野に進んでも、役に立つような様々なことを知ることができる。」
アパジの最大の特徴である即興演奏については、
・ 「即興演奏が良くできるようになると、メロディー、リズム、ハーモニー、形式などの関係から、言いかえれば構造の全て、全体から、音楽作品がより良く理解できる」
最後に、
・ 「大切なことは、「ピアノを弾く機械」になるのではなく、関連性を発見すること、感じることによって、ピアノを通じて創造的な音楽演奏を実現させること、彼らの中に創造的な人間の考え方を形成することである。」
とあります。このように、序文にはアパジのピアノ教育の理念が明確に表されています。

 チューリップの図と見開きの、子どもと一緒に見る2ページ目には、「関連、要素」というタイトルで、「世界の全てのものは要素から成っている」と書かれ、たくさんの花、1つの花、花びら、家並み、一軒の家、レンガと、全体から部分へとものの関係を感じとるために写真が提示されています。


 次のページには、音楽を構成する要素の全体像について書かれていますが、これは、教師のための説明です。

 16ページでは、「音楽の要素 響きと音」として、世界には人間の声、動物の鳴き声、自然の音、物の音、楽器の音など、多様な音の響きがあるということ、また全ての音は複合物で、音と同時に倍音も鳴る、ということが説明されています。要約として、音には音色、強さ、高さ、長さ、という4つの要素がある、と述べています。

 17ページには、「構造の原理」としてストラヴィンスキーの言葉が書かれています。「音楽というものが私たちに下されたのは、全てのものに秩序をもたらすことができるからだ。」「・・・構造、実際に生まれた秩序が、私たちの中に全く特別な体験をもたらす。」
このことについて、アパジは「要素が一定の構造の原理によって配列され、完全な1つのまとまりを作る。構造の原理はさまざまな関係の中にあって、多くの異なる形である可能性も含んでいる。」と補足しています。

 同じページには、「いくつかの最も重要な構造の原理」として、対比、リズム、シンメトリーなどの言葉があげられています。要素と、この構造の原理が、このピアノ教科書の構成の根幹をなすキー・ワードとなります。

子どもと一緒に見る3ページ目には、再びヴェレシュ・シャーンドルの詩があります。
   
   全ての人が喜びをもって知っていることを、
   あなたも知った。
   そして誰も知らないことは、
   あなたも忘れた。
   今はもうほかの多くの人のようになった―
   さあ、見せておくれ、あなたにできることを。
   だって、簡単、簡単だよ、
   小人の間で、巨人になることは。
   でも難しい、そしてもっといいことだよ、
   他の小人よりも立派な小人になることが。
 
 この詩の中の小人とは、ハンガリーの伝統的なおとぎ話に出てくる妖精のことだそうです。詩の意味は、たくさんの妖精の中で、一人だけが突出して巨人になってもそれは意味がない、でもその中で一番素敵な妖精になることはできるよ、という意味です。

 この詩と向かい合わせの子どもと一緒に見る4ページ目には、「対比、移り変わり」というタイトルで、「高い ― 低い、大きい ― 小さい、長い ― 短い、一定の ― 一定でない」などの対比される言葉群と、ローマのサン・ピエトロ大聖堂の昼間と夜の写真が対比されています。


昼と夜:ローマのサン・ピエトロ大聖堂

 次のページには、「移り変わりの例」として、ラントシュ・フェレンツが1969年に創作した現代的な造形が、四季と大きさの対比を変えて映された写真が続きます。


春、夏                              秋、冬

 サン・ピエトロ大聖堂や、これらの写真は、同じものでも昼と夜のように光が違ったり、背景や遠近を変えて見ると、全く違うものとしてとらえられるということを示しています。子どもが、芸術や事象を固定的に捉えないという哲学を、ピアノ学習のスタートにおいていると言えましょう。

 ここまで、子どもが目にするページだけを見ても、ピアノ学習に入る際、ピアノという楽器の音を出す前に、事象を科学的に分析的に捉えようとする目を養うこと、同時に、それらを文学、つまり言葉として表現されている詩を聞き、言葉の世界としても子どもが、そのように捉える力を育もうとする理念を理解することができます。
                              
 子どもと一緒に見る6ページ目には、「音を出すこと」と題され、さまざまな音を出す音具の写真が出されます。教師は、先ほどの16-17ページの、音楽を構成する要素の全体像について、これらの楽器で実際に子どもと一緒に音を出し、即興して音の多様な世界を体験させます。


さまざまな音具

 ピアノの学習に入る前に、世界に存在するあらゆるものに共通する原理や、音の多様な音色や音の要素について、図や詩や写真や建築などの幅広い眼差しの準備をして、7ページ目で初めて、ピアノという楽器の写真が載せられ、子どもたちは、ピアノに出会うのです。
          
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ピアノ

 23ページから27ページまでは、ピアノを実際に弾く準備が具体的に書かれています。
23、24ページは、教師のための説明です。23ページでは、「ピアノで音を出す様々な可能性」として、クラスター、つまり鍵盤を手のひらや前腕で弾いたり、倍音を鳴らしたり、弦を爪で引っかいたり、グリッサンドをするなどの方法や、ペダルの効果についても書かれています。

 正しい座り方やペダルの使い方についても、写真を用いて詳しく説明されています。ペダルについては、「踏み方によって、全部踏む、半分踏む、四分の一踏む、そしてそれらの間の段階を使うことができる」と説明し、踏み方は1種類ではなく、使い方によって微妙な違いを出すことができるということを文章で述べています。



正しい座り方、ペダルの使い方

 子どもと一緒に見る10ページ目には、4手、6手連弾の写真が載せられ、ピアノが決して1人だけで弾く楽器ではないことが示されています。次のページの「即興の課題」にも記されていますが、実際に、教師との連弾によって簡単な即興を行います。


4手、6手連弾

29ページには16の即興課題があります。実際の例として、例えば床に自由に置いたひもの形を見て、「あーああー」と即興的に歌ったり、歌ったものをひもで形にしてみる、ということも、即興の一つです。16番目の最後の課題は、「音による会話、生徒と先生、生徒同士の遊び」となっています。

30ページには、視覚との関連や視覚の要素に基づく課題が書いてあります。視覚の要素は、斑点、点、線に元をたどることができる、と述べ、その三つの要素に基づいた絵を描く課題が続きます。これは、即興した後や即興の前に子ども達が描いた絵です。例えば右側の中央の絵は、太い線と細い線を対比させて書くという課題に対して12歳の子供が書いた絵です。



子どもたちが書いた絵


 アパジは、学習したことの確認として、教師の演奏などによる音楽鑑賞が大変重要である、と述べています。
 34ページには、「自然、音楽、美術作品の例」というタイトルで、自然の音や音楽作品、美術作品の実例が教材情報として挙げられています。ここには、音楽史上の作品や、ジョン・ケージ、リゲティ、クルターグらに代表される現代音楽とともに、レンブラントの『解剖学の勉強』、クールベの『クールベと一匹の黒い犬』、など、音楽以外の教材が挙げられていることに注目したいと思います。
  
 左の絵は、教材情報のページの下にある、「『小さい―大きい』の対比(Kicsi-nagy ellentét)」と題した14歳の子どもの絵です。


小さい―大きいの対比

 子どもと見る13ページ目には、ラントシュ・フェレンツの『響き(Hangzások)Ⅳ』という作品があります。アパジは、この『響き』というタイトルの作品集を、コンサートでは「楽譜として」用いて演奏したと述べており、このことも、音楽と美術には共通する基礎があることを示すものであると言えるでしょう。


ラントシュ・フェレンツ:『響きⅣ』

リズムについては、プラトンの「リズムは動きの秩序だ」という言葉を引用して、「繰り返しと再現の何らかの決まりによってできるプロセス」と説明しています。子どもたちは、一定なものと一定でないものの例として、こちらの二つの写真を目にします。上はパリの高層ビルの並ぶラ・デファンス地区、下はミロの作品です。一定の規則を持って繰り返されるものと、全くそうでないもの、いわゆる自由リズムを、この二つの写真の比較によって、視覚的にも感じることができます。


一定なもの―一定でないもの

 40ページでやっと、音符と休符が出てきます。以降、リズム練習、強弱記号、発想記号、絵画、クラスター、5線譜と、実際に楽譜を見てピアノを弾くための準備が続きます。


音符と休符

 ここまで、アパジ・マーリア著『ピアノの夢』第1巻を、ページを追って、特に子どもが見たり聞いたりする内容を中心に見てきましたが、以上のことから見えてくる『ピアノの夢』の特徴を、7点にまとめました。

1. 美術や建築、自然、文学、数学、科学などの他の芸術や学問との関連を感じることに出発点を置いていること。
2. さまざまな要素と、世界に共通して存在する構造の原理に基づいて、学習内容が構成されていること。
3. ピアノに出逢う前に、ピアノ以外の様々な楽器に触れ、多様な音色を知ること。
4. 鍵盤、弦、ペダル、ピアノ本体部分を使って、現代的な奏法も用いて、ピアノで多様な音を出す可能性を最初から教えること。
5. 学習した要素と構造の原理に基づく即興演奏を重視していること。
6. 即興演奏を絵にするなど、音楽の演奏と絵を描くことを結びつけていること。
7. ピアノ教育を通して、様々な分野との関連性に目を向けることによって、総合的な考え方が広がり、人格全体が豊かになる、という目的を持つこと。

 これらの特徴をもつアパジの『ピアノの夢』の今日的意義を、次のように考えます。

1. 様々な分野との関連性に目を向け、生徒自身がその関連を発見し、感じること、表現することによって、ピアノを通じて創造的な音楽演奏を実現させることができるという視点。
2. ピアノ学習の最初の段階から即興を取り入れ、音楽にも他の分野にも共通して存在するさまざまな原理による即興演奏が、音楽作品をより良く理解し、演奏に役立つという視点。
3. 総合的なピアノの学習を通して、人格全体が豊かになり、将来どのような道に進んでも役に立つような、包括的な考え方を形成できるという、生涯学習的な視点。

 まとめの前に、ハンガリーで、『ピアノの夢』以前に出版されたピアノの教科書の中から、アパジの理念の直接的な基盤となっているテーケ・マリアンヌの『新ピアノの学校』に見る、テーケのピアノ教育の理念を説明しました。

1. 広い視野から始めて、次第に細部に進むこと。
例1.ピアノ全体の仕組み、その可能性、全ての鍵盤、ペダルを試すことから
ピアノ教育を始めること。
例2.わらべうたも含めクラスターなどの現代音楽的な音響を用いて、即興的に全音域を扱うことがあげられます。
2. 指導のための綿密な手引き書『Találkozások a zongoránál Tanári kézikönyv(ピアノとの出逢い指導の手引き)』を著し、初めてのレッスンから子どもと教師の信頼関係を大切にすること。(『Találkozások a zongoránál(ピアノとの出逢い)』)

 これらの理念を可能にするために、テーケは、教師の教材選択を可能にする16世紀から現代音楽までの多様な教材集と連弾集を編纂しています。アパジ・マーリアもまた、ハンガリーの歴史的なピアノ教育の系譜の発展の上に、更なる広い視野をもつ人間教育としてのピアノ教育の教科書を著したのです。
テーケ・マリアンヌの主な業績には、以下のものがあります。
• 音楽学校のピアノ・カリキュラム『Az Állami Zeneiskolai Nevelés és Oktatás Terve ZONGORA』を執筆(1981年)。
• 数多くのピアノのための楽譜やピアノ教員養成の教科書『A Zongoratanításról(ピアノ教授法)』(1994年)を編纂。特に、ハンガリーのそれまでのピアノ教育の理念を発展させ、集大成した『新ピアノの学校』の意義は大きい。 
• クルターグ・ジェルジュ(Kurtág György;1926-)の教育的協働者として、『Játékok zongorára(遊び―ピアノのための)』の誕生に貢献。 『Játékok zongorára』の初演はテーケの生徒によって行われた。

 発表のまとめをいたします。
 絵画、建築、文学、数学などを関連させてそれらに共通する側面を理解することによって、将来にわたる広い視野を育むことや、視覚的な要素と関連させて即興演奏を行うという、人間教育としてのピアノ教育の視点が非常に重要です。アパジの提唱する多様な芸術的な営みが大脳を発達させることが、最近の大脳生理学でも明らかになっています。日本のピアノ教育においても、アパジの理念や方法に学ぶことが求められていると考えます。
 今後は、実際に絵や文学などの様々な領域をどのように関連させてピアノ教育を行うのか、即興演奏をどのように指導していくか、などについて映像を交えて具体的に考察していきたいと考えます。


(注1)日本語版では、『新ピアノの学校』と題し、3巻の出版となったが、ハンガリー語版は、以下の5巻として出版された。『ピアノとの出逢い(Találkozások a zongoránál)』、『音楽の知恵袋(Zenetarisznya)』、『連弾の喜び(Egy-mással)』、『ピアノは友だち(Barátom: a zongora)』、『 ピアノとの出逢い 教師用手引き書(Találkozások a zongoránál Tanári kézikönyv)』。