クルターグ・ジェルジュ作曲
「言葉とはなに」(Mi is a szó) 作品30/a (1990年)

Kurtág György Mi is a szó (What is the word) Op. 30/a
Performances in Bartók Memorial Museum in Hungary and
MDD hall in Date, Fukushima in Japan


ハンガリー語と日本語の演奏をアップします。

朗誦:福島コダーイ合唱団 ピアノ・指揮:降矢 美彌子


バルトーク記念館演奏 
Bartók Memorial Museum 
2012.3.27
http://www.youtube.com/watch?v=rqZpd4DWkgo

福島県伊達市ふるさと会館MDDホール演奏 
MDD hall in Date, Fukushima in Japan
 2013.4.24
http://www.youtube.com/watch?v=N8QRx77FTWY



 作品には、「サミュエル・ベケット『言葉とはなに』-シクローシュ・イシュトヴァーンが訳してモニョーク・イルディコーが伝える-」というタイトルが付けられていて、歌詞はハンガリー語である。作品30/a は、ピアノ伴奏とソロの朗誦、30/bは、ソロ、声楽アンサンブル、器楽楽器群で演奏される。

 クルターグは、晩年失語症に苦しんだアイルランド出身のフランスの劇作家、小説家、詩人、ノーベル賞作家サミュエル・ベケット(1906-1989年)の最後の文章「言葉とはなに」と、交通事故によって失語症に苦しんでいた歌い手モニョーク・イルディコーにインスピレーションを得て作曲に取り掛かった。
 原作はフランス語と英語で書かれている。ベケットが亡くなった年にシクローシュ・イシュトヴァーンがハンガリー語に訳した。モニョークは、世界の各地でこの作品を歌って大きな感動を与えた。歌い手は語り、どもり、悲鳴のように言葉を発し、その間ずっとピアニストが1本の指で音を与え、音をサポートし続ける。モニョークは、昨年6月に亡くなったが、その劇的な表現は圧倒的だった。30/bでは、 モニョークのハンガリー語の直ぐ後に声楽アンサンブルが英語に訳された歌詞を重唱で歌う形で作曲されている。

 福島コダーイ合唱団は、2012年3月26日、27日、ハンガリーの首都ブダペシュトにあるコダーイ記念博物館とバルトーク記念館でのリサイタルで合唱による初演を行った(歌詞:ハンガリー語)。ピアノ・指揮降矢美彌子。この初演では、クルターグが降矢のために作曲したピアノ曲「花 人 ミヤコへ」をエピローグとして演奏した。  

 ハンガリーでは、2011.3.11の東日本大震災の地震・津波・原発事故・風評被害で苦しんだ福島の言葉で語り尽くせぬ思いを魂込めて演奏し、深い感動を与えた。ハンガリーの演奏会評には、「言葉とは役に立たないと私たちに語るベケットの言葉をハンガリー語で朗唱をした演奏は、深く心を揺るがされる演奏だった。彼女たちの福島原発災害の経験が、まさしくこの曲のこの演奏を創ったと考えずにはいられなかった。」とあった。福島第一原発の事故による放射能被災地である伊達市での演奏にあたって、日本語訳を作り直し、震災後2年余を経過しても、復興とは程遠い今の福島の思いを更に深く歌うべく全力で取り組んた。演奏に当たって、クルターグ夫妻が、両原語とも何度も電話でご指導くださった。

 日本語訳初演は、2011年2月波多野睦美 (Mezzo Soprano) 高橋悠治 (Piano)。福島コダーイ合唱団の用いた日本語訳は、高橋悠治氏の訳に降矢が補作したものである。