バルトーク・ベーラ作曲7つのオーケストラ伴奏
「児童と女声のための合唱曲」日本初演


 2012年11月11日、金沢歌劇場において金沢市中学生文化創造夢空間2012が開催され、バルトーク・ベーラ作曲7つのオーケストラ伴奏「児童と女声のための合唱曲」が日本初演された。
曲目:「軽騎兵の歌」「行かないで!」「怠け者の歌」「さまよい」「パン焼き」「ここに置き去りにしないで」「男の子からかい歌」、合唱:ドリーミング・コーラス、アンサンブルMEZAME, 福島コダーイ合唱団、オーケストラ:オーケストラ・アンサンブル金沢、指揮:鈴木織衛、合唱指導:降矢美彌子・粕谷雪子。

 ドリーミング・コーラスは、金沢市立野田中学校、高岡中学校、犀生中学校、西南部中学校、金沢大学附属中学校の合同コーラスである。夏から8回の練習を経て、難曲と言われる7曲のハンガリー語の歌詞を暗譜し、オーケストラの伴奏で見事に歌った。
金沢市中学生文化創造夢空間では、2009年からバルトークの「児童と女声のための合唱曲」を取り上げてきている。オーケストラ伴奏は、2010年に今回と同じく、オーケストラ・アンサンブル金沢、鈴木織衛指揮で3曲を取り上げ、2011年に京都フィルハーモニー室内合奏団、指揮降矢美彌子で5曲を取り上げ、本年7曲全曲の初演となった。

 バルトークは「児童と女声のための合唱曲」を27曲作曲している(1935年)。その内の7曲に小編成のオーケストラの伴奏を作曲し、オーケストラ伴奏はつけてもつけなくてもよいとした。

 7曲の内の5曲「軽騎兵の歌」「行かないで!」「怠け者の歌」「さまよい」「パン焼き」のオーケストラ伴奏は、1937年に作曲され、「ここに置き去りにしないで」「男の子からかい歌」の2曲は、1941年頃アメリカで作曲されたとされる。アメリカで作曲された2曲の歌詞はハンガリー語ではく、英語・ドイツ語などである。金沢市中学生文化創造夢空間では、全曲ハンガリー語で歌われた。

 7曲全曲の楽譜が出版されていないところから、全曲演奏には困難が伴ったが、金沢市中学生文化創造夢空間2012のため、バルトーク・レコード・ジャパンの村上泰治氏のご尽力で、アメリカ・フロリダ州に在住のバルトークの子息バルトーク・ペーテル氏から新たなアメリカで作曲された2曲の楽譜が入手でき、バルトーク・ベーラ作曲7つのオーケストラ伴奏をもつ「児童と女声のための合唱曲」日本初演の運びとなった。

 バルトークは、この合唱曲集の歌詞を主に19世紀に収集された民謡集から取り上げ、更に磨きをかけ、形を整えた。音楽は、バルトークの独創的な創作ですが、モテイーフ、リズム、構造的な形式はハンガリーの民謡の特徴が生かされている。27曲は、自然や人間生活のあらゆる場面が歌われ、その多様さは見事である。

 初演された7曲は、曲想もテンポもリズムの対照的で変化に富んでいて、簡潔ながらバルトークらしい独特のオーケストラ伴奏と相まって、1つの完成した組曲の様相を呈していた。中学生には、大人の感情である恋や孤独を歌った「行かないで!」「さまよい」「ここに置き去りにしないで」の3曲に込められた失恋の思いや神にも見放されたと嘆きながらさまよう孤独な老人の思いを歌うのに若干の感情表出に難しさあるようにも思われたが、全力でよく歌い切った。一方、テンポや強弱や拍子の変化が多く技術的には難しい「パン焼き」は、動物や虫などがパンを焼く様を歌ったおとぎ話のような作品の魅力に魅せられて、楽しく歌ったことに中学生らしい魅力が溢れた。「軽騎兵の歌」「怠け者の歌」「男の子とからかい歌」は、明るく楽しく中学生にぴったりだった。

 音色的に違いのある中学生とアンサンブルMEZAME, 福島コダーイ合唱団のコラボレーションは、オーケストラ・アンサンブル金沢の伴奏と相まって、見事に一体化して音響に優れた金沢歌劇場に美しく響いたことが特筆される。

 なお、このバルトーク・ベーラ作曲7つのオーケストラ伴奏「児童と女声のための合唱曲」は、1970年にハンガリーのHungarotonが、ドラーティ・アンタル指揮、リスト音楽院合唱団、ブダペシュト交響楽団の演奏でレコードをリリースした。

(本稿は、全日本合唱連盟会報「ハーモニー」への寄稿文である。)