バルトーク作曲『児童と女声のための合唱曲集』
2008年全曲演奏会のライヴDVD



 指揮は,ハンガリーを代表する合唱指揮者ウグリン・ガーボル,演奏は福島コダーイ合唱団。
 指揮のウグリンと福島コダーイ合唱団は,20年を超える協同の演奏活動を行なっている。福島コダーイ合唱団は,すでにハンガリーを代表する女性合唱指揮者モハイネー・カタニチ・マーリアの指揮で,2001年仙台と福島で,また,筆者の指揮でヘルシンキで全曲演奏を行っている。
 2008年8月の『児童と女声のための合唱曲集』連続演奏会は,それらの集大成と言えるまさに渾身の演奏である。本ライヴDVDの特徴は,演奏だけを聴くこともできるが,字幕に訳詩を挿入した演奏も収録したので,バルトークが愛した民謡の歌詞のテロップを見ながら,演奏を聴くことができる点にある。
 注文フォームは,http://www.interq.or.jp/www1/posta/fkc/dvdyoyaku.htm



バルトーク・ベーラ作曲『児童と女声による合唱曲集』について


 バルトーク・ベーラの『児童と女声による合唱曲集』は,1935年に作曲され,翌年12月に出版された。コダーイ・ゾルターンは,この作品集の出版にあたって「ハンガリーの子どもたちは,自分達が生涯にわたって影響を受けるに違いない贈り物を1936年のクリスマスに受け取ったことをまだ知らない。」という文章から始まる論評を書いた。

 論評は,次のように続けられた。「バルトークの音楽の語り口は,子どもたちがすぐに理解でき,身近に感じる語り口なのだ。」,「彼は,白髪が混じっていても,子どもの精神が残っている大人として,子どもたちを仲間として尊重している。」,「バルトークが子どもたちに語りかけていることは,彼が大人に対して語りたい事柄なのだ。この作品集は,大人の世界に対しても芸術性に満ちていて,高い価値をもっている。」

 この作品集について作曲家の林光は,福島コダーイ合唱団の演奏会(2008.8)のチラシに以下の文を寄せた。「この小曲集は,脱・長短調の和声,簡潔のきわみともいえる対位法によって,ハンガリー民族音楽の源流からはるか未来までを一直線に見とおしているかのようだ。」

 作品集には,27曲のア・カペラ合唱曲が収められている。それぞれの作品の演奏時間は短く,3分を越える作品はない。しかし,これらの27曲には,子ども時代から青年期までの,人間と自然のあらゆる営みが詠われ,バルトークの多様な作曲技法とあいまって,珠玉の名品となっている。詩は,バルトークが主に19世紀に収集された民謡集から取って,形を整えたものだと解説されている(*)。もし,この作品集がなかったら,21世紀の合唱曲のレパートリーは,どんなに貧しくなってしまうだろうか。


(*)新訂版の校訂者サーボー・ミクローシュによる。バルトーク・ベーラ『児童と女声のための合唱曲集』全音楽譜出版社。