—西洋と東洋の巨匠との出逢い—
ハンガリーのア・カペラ合唱とバリ島のガムランの夕べ
ウグリン・ガーボル氏とイ・ワヤン・スウェチャ氏を招聘して
福島コダーイ合唱団第24回演奏会



混声

バリス

ウグリン氏とスウェチャ氏

■8月12日 福島市音楽堂大ホール
■主催 福島コダーイ合唱団・創造集団「輪」、共催 福島民報社

 福島市音楽堂の深い豊かな響きのもと、「ハンガリーのア・カペラ合唱とバリ島のガムランの夕べ」演奏会が行なわれました。この音楽会の特徴は、福島コダーイ合唱団という1つの合唱団が、ハンガリーを代表する合唱指揮者ウグリン・ガーボル氏と、かつてバリ島一のクンダン(バリ島の太鼓)奏者と称され、アメリカやカナダでガムランを教え、かの地にガムラン演奏グループを創設したイ・ワヤン・スウェチャ氏を招聘して、西洋と東洋の巨匠との出逢いと題して、東西の音楽を共演したことだと言えましょう。

 ウグリン氏の初来日は1978年、以後約30回来日して、日本の各地で合唱指揮の指導や演奏会を行われました。ウグリン氏は、元ハンガリー国立合唱団常任指揮者、BBC放送合唱コンクール優勝、1975年リスト・フェレンツ賞、1998年コダーイ・ゾルターン賞、2002年バルトーク・ベーラ-ディッタ・パーストリー賞受賞した、文字通り合唱の国ハンガリーの名指揮者です。福島コダーイ合唱団とは1986年から20回の定期演奏会を指揮し、バルトーク作曲「児童と女声のための合唱曲集」を始め6枚のCDをリリースしていいます。第一部のプログラムでは、コダーイの理念を具現するかのように、ハンガリー民謡から始まり、ア・カペラ合唱の名曲が祈りに満ちて歌われ、日本民謡で締めくくられました。第一部のプログラムは以下の通りです。

 ウグリン・ガーボル氏とともに  
―ハンガリーア・カペラ合唱の醍醐味―
ハンガリー民謡
  お助け下さい、神様
バルトーク・ベーラ <児童と女声のための合唱曲集>
  春  ここに置き去りにしないで!  女の子からかい歌   鳥の歌 
  神様がともにおられますように!
コダーイ・ゾルターン <児童と女声のための合唱曲集>より  
  アヴェ・マリア ヴィッルー
クルターグ・ジェルジュ 
  首飾り (指揮:降矢美彌子)
ヤーコプ・アルカデルト
  アヴェ・マリア
コダーイ・ゾルターン <混声のための合唱曲集>より
  美しき悲願   夕べの歌
宮崎県民謡  刈干切唄


 第二部は、グンデル・ワヤン(ガムランの室内楽)とガムラン・ゴン・クビャールという二種類のガムランが演奏され、間にスアチャ氏によるグンデル・ワヤンやワヤンのお話とワークショップがあり、大勢の子ども達がステージに登って、ガムランを楽しんで体験しました。福島市の音楽堂にグンデル・ワヤンやガムラン・ゴン・クビャールのフルセットが運ばれたことは初めてのことです。

 ハンガリー、日本、バリ島というプログラミングは、一見如何にも唐突に見えます。しかし、実は、ハンガリー人は、アジアから民族移動したアジア系の民族で、ハンガリー民謡は単旋律で五音階ですし、言語も姓名と表記し、主語述語を省略することが多いなど、日本とも共通するものが感じられます。コダーイ・ゾルターンやバルトーク・ベーラは、真にハンガリー的な音楽を求めて農村をまわり、数千曲の民謡を収集して研究し、作曲や教育に生かしたのです。

 バリ島の音楽は、音階としての概念は異なりますが、多くは、日本の民謡音階に似通った響きのあるスレンドロ音階と琉球音階に似通ったペロッグ音階でできています。ちなみにグンデル・ワヤンはスレンドロ音階、ガムラン・ゴン・クビャールは、ペロッグ音階です。バリ島の音楽は、二元論でできていて、単純な音のパターンを重ねていく点で、日本やハンガリーとは異なりますが、聞きあってコミュニケーションを根底におく本質は共通しています。一見関連性がないようで、深いところで繋がっている3つの音楽の共通点と異なる点が浮き彫りになったという意味で見事な音楽会であったと言えましょう。
 第一部では、すでに高齢を迎えたウグリン氏の現世を超越したかのような自然そのものの指揮から醸し出されるア・カペラの自在な表情が音楽堂に響き渡りました。第二部では、スウェチャ氏のクンダンに導かれた緩急強弱自在な切れ味をもつバリス・ガムランと<バリス>の踊りの演奏は、わくわくするような興奮を呼んだのです。

 長年の学びと準備の上に、西洋と東洋の巨匠を招聘し、共演したからこその異文化音楽の深い喜びの湧き立つ音楽会となったと言えましょう。この音楽会は、1963年に開かれた国際音楽教育協会(ISME)東京大会、その時のテーマ「音楽と音楽教育の世界における東洋と西洋」の実現でもありました。その意味で一つの歴史的な意味をもつ音楽会でありました。
 第二部のプログラムは以下の通りです。

青銅のオーケストラ・バリ島のガムラン
―バリ島からイ・ワヤン・スウェチャ氏をお迎えして―

グンデル・ワヤン(小編成のガムラン)     
                      演奏 イ・ワヤン・スウェチャ 守屋圭子
  チュチェッ・ムグルッ  ムラッ・アンゲロ
ガムラン・ゴン・クビャールワークショップ  
                      イ・ワヤン・スウェチャ
バリス           
                クンダン:イ・ワヤン・スウェチャ 丹野幸枝・濱口可奈子
                バリ舞踊:守屋圭子
                ガムラン・ゴン・クビャール:福島コダーイ合唱団